一子相伝の伝統技法を守り続けて  - 小鹿田焼 坂本庸一窯 -

小鹿田焼(おんたやき)とは?

小鹿田焼は大分県日田市の山間にある源栄皿山(もとえさらやま)地区で作られる焼き物で、その歴史は約300年以上前に遡ります。制作過程ではなるべく機械や電気を使わないといった、昔からほとんど変わらない制作過程を守り、現在は9軒の窯元が一子相伝で伝統の技を今日まで継承しています。

小鹿田の里訪問



小鹿田焼の歴史

筑前藩主 黒田長政が朝鮮出兵の折、朝鮮人陶工の八山(日本名:高取八蔵)を日本へ連れ帰ったことが始まりと言われています。福岡県の高取山に窯を開き、孫の八郎が小石原焼を開窯。18世紀に入ると、日田の代官が陶芸技術の伝承のため、小石原焼の陶工 柳瀬三右衛門を小鹿田の地に招きます。その際に、黒木十兵衛が資本金を用意し、坂本家が土地を提供しました。現在ある9軒の窯元の当主の苗字は、それぞれ柳瀬、黒木、坂本などであることからも小鹿田の歴史そのものであることが分ります。また、そのような流れから、福岡の小石原焼は小鹿田焼とは兄弟窯とも呼ばれています。

焼き物づくりにも機械化が進んでいた頃、昭和45年(1931年)に民藝運動の指導者である柳宗悦(やなぎむねよし)、陶芸家の濱田庄司、イギリス人陶芸家バーナード リーチらが、それまでほとんど知られていなかった小鹿田焼を紹介し、広く世間に知られるようになります。平成7年(1995年)には国の「重要無形文化財」に指定されました。



まるで、いにしえの時にタイムスリップしたかのような焼き物の里山あちこちから唐臼(からうす)の心地よい音が鳴り響いています

小鹿田の里に行きました
唐臼

唐臼とは、水の流れを利用してテコの原理で動く粉さい機です。一昔前の焼き物産地にはどこでもあったそうですが、小鹿田では今でも現役バリバリで働いています。小鹿田の里に入ると、「もぉ''~~」という低めの音が、どこかしこから聞こえてきます。小さな里の中には約40の唐臼があり、陶土の材料である陶石や、釉薬の材料を細かくしている風景は、昔話の世界に入り込んでしまったようです。

小鹿田の唐臼
小鹿田の皿山の里


周辺で採取した陶土は、乾燥させ木槌でこぶし大の大きさにし、唐臼で約10日~2週間くらいかけて粒子状になるまで粉砕します。

小鹿田焼の里に行きました


家族単位で焼き物をつくる体制となっていて、女性は主に土作りや釉薬などの仕込み、男性は作陶を担っています。ロクロは電動ではなく足で回す蹴ロクロ。蹴ロクロは一つの窯元に2台までと決められているそうです。

女性の仕事もなるべく機械力を使わない伝統の作り方に基いているため、とても大変な作業量と労力が必要とされます。例えば、土づくりだけにしても、唐臼で細かくした原土を水を加え何度も撹拌しふるいをかけます。その後、''オロ''と呼ばれる''ろ過漕''で水抜きした土を日光や乾燥用の窯の上で乾燥させ、陶土はやっと完成となります。

小鹿田の里
乾燥用の窯 小鹿田焼の里


制作過程も含め、こういった下準備もほぼ昔からの方法をそのまま引き継いでいるそうです。また、外からの人を入れず、家族の力だけで担うということも、小鹿田焼の特徴となっています。そのため、どうしても生産量は限られてしまいます。

今回お取り扱いさせていただく坂本庸一窯さんは、息子さんの庸一さんの代で6,7代目くらいとのこと。(おかみさんいわく、はっきりとは分からないそうです)小鹿田焼の技を親から子へ受け継ぐ一子相伝での技術の継承。昔のカタチをなるべく崩さないように...伝統的技法を守り続けながら作陶することは容易ではなく、ロスが6割くらい出てしまうこともあるそうです。

小鹿田焼 坂本庸一窯


窯は薪をくべる登り窯です。この日はちょうど火入れの日。''前だき''と呼ばれる窯の温度を上げるための作業をされていました。

坂本庸一窯さんの窯


温度を上げるための薪は古材を使用し、焼成時は主にスギを使用。作業は約30時間夜通し行われます。火が入った登り窯はまるで生き物のごとく力強い存在感を放っています。

小鹿田焼の窯


素朴な味わいの小鹿田焼は、絵付けがないのも特徴の一つです。伝わる数々の技法が施され独特の作風になっています。

飛び鉋(とびかんな)
弾力性のある金属で作った鉋で、細かい連続的な模様をつける技法。鉋は古いゼンマイ時計の部品を利用して作り手が道具を自ら手づくりします。

小鹿田焼の飛び鉋のうつわ通販
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刷毛目(はけめ)
刷毛を使って化粧土を連続的に濃淡をつける技法。小鹿田の土は鉄分が多いこともあり焼成すると少し色がくすむため、何とかして白く見せようとしたのが始まりだそうです。

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その他の主な技法に、''櫛描き''(木材の半月型の櫛状の道具で、波線模様を描く技法)、''打ち掛け''(釉薬を柄杓で勢いよく作品にかけて模様をつける技法)、''流し掛け''(スポイトや柄杓で作品に流れるように掛ける技法)、指で描く''指描き''などがあります。

近くの山からの土取りなどは、制作する分だけを計画的に共同で行われ、また窯元の名を作品にいれず、地域の窯元全体で作品作りを行うことも伝統的に引き継がれているそうです。里全体が共同体として協力しあい、土と水に恵まれた自然の力と手仕事のあたたかな味わい深さが、「世界一の民藝」と言われる独特の作風を守っています。変わらないことの難しさ、尊さ、純粋な美しさ備わった民藝のうつわです。


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