鎌倉の工房で生まれるどこか懐かしいグラス - 極楽寺ぐらす工房 -

昭和レトロ感が素敵に漂う江ノ電 極楽寺駅。ほど近くのちょっとした谷間に「極楽寺がらす工房」さんはあります。

極楽寺がらす工房


鎌倉の自然が豊かで、海からの風のざわめきが絶えず感じられる美しい場所。「この辺りには野生のフクロウが3羽いいるんですよ」とご主人の彰一郎さんが教えてくれました。

 2004年に鎌倉出身の岩沢彰一郎さん、睦子さんご夫婦が設立した極楽寺がらす工房。中学校の同級生だったお二人はともにガラス作家として、心に残る作風の作品を作られています。

極楽寺がらす工房


幼いころから絵を描くことなど、もくもくとした作業が好きだった奥様の睦子さん。何か手に職をつけたいと思っていた際に、たまたま見かけた吹きガラスで作られたオーストラリアのガラス作家の作品に衝撃を受け、東京ガラス工芸研究所で学ぶことになります。卒業後、今後は吹きガラスの制作技術習得のため、能登島ガラス工房の受講生に。コース終了後、どうしても働きたくて何度も断られた後に粘り勝ちで入社。引き続き能登島で経験を積むことになります。

そんなころ、彰一郎さんは大好きだった「水」に関わるスキューバーダイビングの仕事を続けていくか悩んでた時で、気晴らしになりそうだと睦子さんがいる能登島へ。みんながひたむきにガラス制作をしているのを見て、「面白そうだな。自分でも出来るな」と感じ、夜こっそり工房に忍びこんだのだそうです。

ガラス作家さん工房


吹きガラスは、約1,200度の窯で熱したドロドロの液体状になったガラスを吹き竿と呼ばれる金属管に巻き取り、その先端に巻き付いたガラスを落とさないよう絶えず竿を回転させて加工していきます。少しでも竿の回転を止めると熱されたガラスは落下することになりますが、彰一郎さんはその落下しそうなガラスを落とすまいとなんと手で受け止めてしまったそうです!?

「その頃は何でも出来ると思ってたんでしょうね。窯から出したガラスが下に落ちそうになったのでヤバい!と思わず受け止めた瞬間、手に経験したことがない痛みが走りびっくりしました。」 な..なんと!! オソラク周りの方はもっとびっくりしたと思います...。

結局その大やけどのせいで、本来数日の滞在予定が1ヵ月近くも能登島に滞在することに。パンパンに腫れた激痛の手で、学生やスタッフのガラス制作を見ているうちに自分の好きな「水」に近いようなガラスの魅力に取りつかれていきます。そして何よりそこで知りあえた人たちの情熱に触れ、能登島ガラス工房の門をくぐることになります。

その後、お二人それぞれ能登島での約10年弱の経験を積んだ後、満を持して出身地の鎌倉に戻り結婚。同時に築窯。

工房はまず窯を作ることろからお二人で始めたというのだから驚きです。
「設計図を引くところから考えたら約7カ月かかりました。溶接とかも未経験だったから、溶接会社の人が心配で見に来てくれたりしてね。本当皆さんに助けられました。」と岩沢さん。さらっとおっしゃってますが..このお二人凄いです!

こちらが手づくりの窯。緑いっぱいの光が差し込む気持ちのいい工房。

極楽寺がらす工房


当店で取り扱いのある金魚とひまわりのグラスは主に奥様の睦子さんが作成。イタリアの伝統的な技法「ムリーニ」という技法でつくられています。小さな色ガラス片を表現したい模様の形に束ねて溶かし、伸ばしたガラス棒を作っていきます。金太郎飴のように、そのガラス棒を輪切りにするといくも同じ模様が出来上がります。出来たパーツは工程の途中で丁寧にグラスに埋め込んでいきます。

極楽寺がらす工房金魚
極楽寺がらす工房


とても細かいパーツなので作るのが大変のような感じですが睦子さん曰く「こういう細かい作業が好きなんです。」とのこと。

窯で溶かしたガラスを竿に巻き付け加工していきます。

ガラス制作

ガラス工房制作
店主も試しに吹きガラスの体験をさせていただきましたが、ガラスはみるみる下に下がっていきました。難しい作業です。

ガラス工房制作風景


金魚がフワフワお水の中を泳いでいるような「泡」は重曹水をかけて表現。
暑さからも解放されそうな涼し気なグラスです。

極楽寺がらすの金魚のグラス


ガラス制作は温度との勝負。夫婦息の合った動作が必要になります。


年に一度、炉の交換があるため約1カ月窯の火を止めますが、それ以外は常時窯に火を入れ続ける必要があるのだそうです。ほぼ毎日制作しているため、常に一定の火力を保ち続けるよう窯の火を絶やさないようにしなければならないので、夏場は倒れてもおかしくないような温度になります。

極楽寺がらす工房風景
手前の白の鉢のようなものが任期を終えた炉。今はお魚さんのお家

極楽寺がらす工房


「これからも心がなごむような作品を作っていきたい」と睦子さん。

彰一郎さんは大好きな「水」をテーマに作成していきたいと語ってくれました。
しきおり店主とは同年代のお二人。これからも素敵な作品を楽しみにしてます。

 お忙しいところ、お邪魔させていただきありががとうございました!

 

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極楽寺がらす工房さんの作品


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